どのような採用支援サービスが中小企業の採用力強化に向いているのでしょう。長年、中小企業において採用活動をコンサルティング&ディレクションしてきた経験に基づいて社員採用支援サービスの比較して、活用の際には何を考え、対策すべきかを書いてみました。(採用支援サービスは数多くありますが、よく話題に出てくるまず4つから記載し、順次増やしていきます。)
目次
①求人広告会社の採用支援サービスは採用力強化に向いているか?
求人広告の営業パーソンは中小企業の採用活動の良き相談相手か?
「さぁ、採用だ!」と採用活動のスタートを決めた時、大手のナビ媒体(Webで求人広告)を思いつき、早速営業パーソンを呼ぼうとする会社は多いようです。
営業パーソンの肩書きも採用コンサルタントであったりもします。当然、営業パーソンは自社の広告枠の販売することが目的ですから、自社の求人広告サービスを有効に活用するためのコンサルティングを行います。
彼らも営業熱心ですし、私も何人も求人広告媒体の営業パーソンにお会いしました。その中でクライアントの採用の成功までをコミットできる優秀な営業パーソン、採用コンサルタントは経験上、かなり少ない印象を持っています。
顧客の採用成功にコミットできる求人広告会社は少ない。
クライアントの採用の成功にコミットするのであれば、成果が上がりそうにない場合、掲載期間中に積極的に自ら広告の修正を提案したり、一定期間の無償延長などクライアントの要望にも対応しようとするものです。(彼らにとってコストでしかないのでそのような対応に消極的であっても仕方がないと言えば、そうなのでしょうが)。
締め切りまでの時間の制約・広告予算の制約で十分な検討ができない
彼らの立場に立ってみれば、記事掲載の締め切りまでの時間的な制約があります。また、複数の顧客を抱える中で一顧客にかけられる労力や予算の制約もあるでしょう。
結果、ターゲットとなる候補者層にどのように自社の魅力を打ち出していくのか十分な検討ができず、どこかの会社で見たような求人広告(総花的、陳腐、抽象的)になっているケースも多く見受けられます。
ただし、これは一方的に求人広告会社だけが悪いという訳でなく、企業側もアピールすべき自社の魅力が曖昧で求人広告会社の取材に答えることができていないという問題もあるでしょう。
求人広告会社のスタッフ達は忙しい
顧問先で私がディレクションを行う際、彼らとミーティングを行うこともあるのですが、「あー忙しくて、遅くまで仕事をしているんだなー」という目をしていることがままあります。きっと時間が足りず、結果として「えい、やー」と作ったんだなと。結果として顧問先にヒアリングしていたはずの内容もしっかり反映されず、他社と全く変わり映えのしない、アピールできない求人広告案になったんだなと感じられることは珍しくありません。
そもそもですが・・・
大手の求人広告会社であれば、往々にして認知度の低い中小企業には、経験のまだ浅い若手の営業パーソンやクリエイター(求人広告の記事制作や写真・デザインの担当者)が担当となるケースがままあります。業界経験はもちろん、高学歴であっても社会人経験1〜3年と若い営業パーソンやクリエイターです。
たまに「大手の(著名な)クライアントを担当してました!」と誇らしげに語る方を見かけますが、そんな放っておいても応募が集まる企業の実績は中小企業では何の役にも立ちません。応募が集まらない中小企業に、応募を集めてこその実績です。
そんな彼らがクライアントの事業とその魅力を十分またスピーディに理解し、候補者層の興味を十分に引くようなアピールポイントを考え、候補者の人生のターニングポイントとなるような文章を書くというのはそもそもハードルが高いことのようにも思えます。
ですので、私の顧問先では、彼らが作成した求人広告案が私の赤字修正だらけになることがままあります。
(念のため、優秀な方もいない訳ではもちろんありません。)
求人広告会社を使う場合の対策
自社の魅力がしっかり整理できていない会社は求人広告が場当たり的なものにならないように、ターゲットに響く魅力の棚卸し・魅力作りを事前に行い会社説明資料などに纏めることをおすすめします。これが求人広告のガイドとなり、散漫・陳腐になりがちなアピールを防ぎます。費用対効果を高め、効果的な求人広告の活用のためには、求人企業側のリード、マネジメントは不可欠です。
昨今、自社で記事を作成し投稿できる求人メディアや、求職者データベースを求人企業に公開し、直接メールによるアプローチが可能になるサービス(ダイレクトリクルーティング)の提供会社も増えています。前者では大手の求人広告会社に比較して掲載コストが抑えられる点が魅力だったりしますし、後者では候補者個人への直接のアピールで効果的に興味喚起できる可能性があります。(ダイレクトリクルーティングサービスは職種によっては候補者へのアプローチが多すぎて開封されづらいというような問題はありますが・・)
そのようなメディアを使う際には一層、候補者層について、また候補者層に応じた自社の魅力について考え、整理すること大切になります。
②人材紹介会社の採用支援サービスは採用力強化に向いているか?
人材紹介会社の営業パーソンは中小企業の採用活動の良き相談相手か?
人材紹介会社の営業パーソンは企業によっては採用コンサルタントだったり、エージェントだったりを名乗っています。
彼らは顧客に市場感を伝え、人材要件を確認し、求人票に落とし、自社のデータベースにある求職者に求人案件を紹介し、応募から入社までフォローしています。彼らのデータベースにいる登録者に有効なアピール方法や、応募してきた登録者を入社につなげるための方法をコンサルティングします。契約により成果報酬で入社した社員の年収の20%-50%(平均すると30%程度)が顧問先より支払われます。
中小企業の経営者の方とお話しをすると「人材紹介会社にお願いしたんだけど、なかなか紹介がない。」というようなお話を伺います。
私も顧問先の採用活動支援で人材紹介会社に網を張っていくお手伝いをしますが、経験上、顧問先のために頑張って動いてくれる人材紹介会社は、50社と会って1割あるかないかです(全国で約17,000社あるそうです)。これは私の顧問先が「認知度が低い」会社がの中小企業がメインであるということが関係しています。
人材紹介会社が積極的に候補者を紹介したくなる中小企業とは?
先述のとおり、人材紹介会社は紹介した候補者が入社して初めて成功報酬を受け取ります。ですので人材紹介会社が積極的にお付き合いしたい会社とは・・
1「魅力を伝えやすい会社」
つまり、候補者に『受験したい!』と言ってもらいやすい会社。
もしくは求人紹介により登録者が増えそうな著名な会社。
2「入社までのハードルが高くなく、積極的に採用している会社」
つまり人材紹介会社が売上を作りやすそうな会社。
3「登録者の新陳代謝を促せる会社」
つまり人材紹介会社のデータベースに多く登録している候補者タイプを積極的に採用している会社。
従って中小企業で認知度が低く、優秀な社員を採用しようと選考のハードルが高い会社は、放っておけば確実に人材紹介数は減っていきます。
人材紹介会社を使う場合の対策
こんな社員が欲しいという人材要件に応じた、紹介しやすい魅力づくり・棚卸しができるかはとても大切です。会社・事業・ポジションの魅力だけでなく、「選考期間の早さ」、「人材需要」、「候補者の要件」など人材紹介会社向けのプレゼンテーションはとても大事になります。
③ヘッドハンティング会社の採用支援サービスは採用力強化に向いているか?
ヘッドハンターは中小企業の採用活動の良き相談相手か?
人材紹介とヘッドハンティングを同義に捉える方もいますがビジネスが全く異なります。
ヘッドハンティングは現役で活躍するビジネスパーソンを探し、クライアント企業が募集するポジションへの適性を見極め、口説き、入社までをコミットします。往々にして他者に知られたくない非公開の役員・部長クラスや専門職(年収ベースで少なくとも1,000万円前後以上)の求人を対象としています。例えば社長の後継者や右腕のポジションを募集する際に選択肢の1つになります。
またリテイナーと呼ばれる初期費用(候補者をリスト化するためのリサーチ費用)+成功報酬(ケースバイケース)で多額の費用がかかります。
ヘッドハンティング会社によっては、クライアント企業の方向性に基づいて戦略を策定し、ヘッドハンティングに当たって準備すべき環境の整備、人材要件などの整理等のサポートがなされますが、さらに多額のコンサルティングフィーがかかる場合がほとんどでしょう。
また、特定のポジションについて人材を採用する(多くの場合1名)には予算が見合えば良いアプローチですが、継続的に一定の要件を満たす候補者を採用する体制を作っていく目的には沿いません。
ヘッドハンティングを使う場合の対策
中小企業においても、事業承継、M&Aなどに伴ってヘッドハンティングを検討すべきタイミングはあるかと思います。年収レベルやポジション、候補者となりうる人材の希少性に応じて検討します。活用の際には業界での実績(人脈の有無)を確認し、金額・期間(スケジュール)・成果物・最低限の面談設定回数などの条件面をしっかり調整して活用しましょう。
④アウトソーシング会社の採用コンサルティングは採用力強化に向いているか?
アウトソーシング会社は中小企業の採用活動の良き相談相手か?
アウトソーシング会社は採用業務を受託します。母集団形成のための求人広告会社や人材紹介会社との調整、会社説明会の運営、応募受付・管理、面接調整、一次面接代行(必要に応じ)、内定者フォロー、入社時対応などをSLA(サービスレベルアグリーメント:サービスレベルの合意)に基づき実行します。
大量の応募がある大手企業や著名企業では少ない正社員だけで採用業務を任せようとすると、候補者と面接官の調整業務に追われてしまい、全く企画業務に手をつけられないというような状況が往々にして生まれます。正社員を企画業務に集中させるために採用アウトソーシング会社を活用するケースがよく見受けられます。
中小企業では大手企業のように数千・数万単位で応募を集めることはありませんし、応募管理のWebサービスなどを使い、数百レベルであれば担当者が十分に対応できるレベルです。
アウトソーシングを使う場合の対策
アウトソース(外部委託)は本来、煩雑化している業務や社員が対応するには非効率と思われる業務を対象として社外に出してコストパフォーマンスを高めていくものです。まだ十分に採用体制が構築できていない企業では、アウトソースのコストパフォーマンスは測ることは比較対象できる自社での実績がないため、当然困難です。
また、成長を志す中小企業にあっては採用を強化することで「自社磨き」をします。魅力がなければ人は集まって来ない(採用できない)からです。そういう意味からも、社内外の求心力を採用活動を通して高めるチャンスを最初から外部委託で捨てようとするのはもったいないことです。
最初からアウトソースではなく、体制構築をした後に必要に応じて一部を外部委託していくのが妥当です。
社員採用支援サービスはこの他にも色々あります。追って書き足して行きたいと思います。
平井としひろ
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