2018年弊社でもAIへの取り組みを2つスタートする予定。一つは弊社で提供するWeb適性検査(行動価値検査)は機械学習による強化を図る計画がある。もう一つは何らかサービスをローンチしようということで模索を始める。ここではAI関連の参考書籍として購読したものを忘備録も兼ねて感想を記載する。
目次
人工知能×ビッグデータが「人事」を変える
AI & BIGDATA WILL CHANGE HR
著者 福原正大/徳岡晃一郎
★★☆☆☆
評価ポイント①:AIをイメージするには物足りない書籍
これから自社の人事分野でAIの活用を真剣に考え、AIのロジックや活用に当たっての適応範囲、データ収集、運用などの具体的なアプローチを少しでもイメージしたい読者には不向きな本かなと思う。
読後感としてはAIとBigdataに万能信仰が強い本だなと感じる。(文章中にあくまでもAI&Bigdataを使った分析は指針を与えるものでしかないという趣旨の記載はあるが・・)
「進化すればこんなことができるはず。」的な文章が多く、AI素人には「ほんとかよ」と思わせる余地が多い。人事分野で、AI &Bigdataでどうアプローチすれば(導入方法論/ロジック)、どこまで(範囲)どのように(結果)、諸課題が解決されるかの具体的なイメージの記載が十分に記載されていない。裏付けとなる文章が欠如していて残念ながら説得力を感じないのだ。
ただ、人事データをビッグデータとして抱えられる企業は実際多くはないだろうし、実際に導入もしくはトライしている企業も少ないだろうから、具体例も少なく仕方ないことなのかもしれないが。(ヒントとして、AI&Bigdataを使うこんな海外のWebサービスがあるよという紹介がされてはいる。)
評価ポイント②:優秀な人事パーソン像についての記載
人事の役割の変化について記載している部分など、なるほどと思えることが多かった。
特に印象に残ったのは、企画系人事が跋扈する前の優秀な人事パーソン像を記載している部分。
企画系人事が跋扈する前は人事には頭だけでなく、体力や感性も必要とされていた。リーダー達と戦略を語りあって現場のコアコンピタンスや暗黙知を引き出し、マネージャーの苦情を聞いて信頼関係を醸成していた。そのような活動を通して組織のキーパーソンを炙り出し、彼らをどう生かし、育てていくかを考え、部署間の人事交流を支えていた。組織の活性度を肌で感じ、制度ではカバーできない部分をファインチューニングしていた。組織の硬直化や悪平等を避けた絶妙なバランスをとり、いい人材が干されていたら次のチャンスを与え、組織の病巣があれば手遅れになる前に部門長の相談に乗っていた。このような個別人事は、反面、暗黙知マネジメントの典型例である。(中略)人事パーソンはそれぞれに違ったノウハウ、コツを持ち、説明しようのない直感で正しい判断をしていくことで評判を得ていたし、ある意味、怖い存在だった。(p76)
優秀だと評価されていた中堅・大手企業の人事部長はまさにこのようなイメージであったように思う。この文章を読みつつ、若い頃、すごいなと憧れた某社の人事部長をふと思い出す。(一方でベンチャー企業の人事部長にはまだ見受けられるイメージのようにも思う。)
とは言うものの、上記のような優秀な人事部長は必ずしも大多数であった訳でもないだろうと思う。書籍中に記載されていることとは少し異なるが、AIを活用した人事部長のイメージはもしかしたら、ここに近づくのかもしれないとも思う。
書籍では、
(諸々の定量化、基準化が企業で行われても)、暗黙知人事の根底にある、限定的空間・限定合理性を許容した職人的個人技の意思決定という本質は変わらないのだ。人事や管理職個々人の直感的・経験的な暗黙知でなく、引き継ぎ可能、比較可能な個人データで判断し、最適なアドバイスをしていくことが必要だ。(中略)データから本質を見つける客観的な職場インサイトの共有の上に立った意思決定が必要となる。(p84)
とある。
ちなみに今の人事パーソンのイメージは以下のように本書籍に記載されている。
制度主義と現場主導の評価で徐々に人事は御用聞きの類いになっていき、また、現場への深い浸透を前提にした暗黙知であるため、グローバルに戦線が広がるととても対応できなくなる。また多様な働き方を認めるダイバーシティで現場をフォローするにも拠り所をどこに求めるべきか難しい時代になる。結果として制度主義、コンサルタントにお任せという企業が増えた。結果として自社に即した運用が難しくなったのだ。
評価ポイント③:中堅・大手企業の人事諸課題が纏まっている。
評価できるポイントとして、中堅、大手企業における人事の将来に向けた諸課題はコンセプチュアルに一覧表でよく纏まっているように思う。(P147-)
まとめ
AIの具体的導入に関する技術的知見を増やした後で、どのような分野に応用することが妥当なのか検討するために改めて戻って読んでみようと思う。
平井としひろ
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